山羊形印章(紀元前2200-1800年 バクトリア)
材質: 青銅
サイズ: 高さ 4.6 幅 5.6cm
山羊の姿を象った印章。迷路のような仕切りによって描かれた独特の意匠。隙間を埋めるように平行線がいくつも描かれ、その全てがほぼ同じような間隔となっていることに驚かされます。何かの法則により生命が成り立っているということを訴えかけてくるようです。眼だけは独立していますが、そのほかの線はまるで体を巡る血管のように全て繋がっています。1つ前に投稿したピンと同様、喉の下あたりに膨らみが表現されているようでもあります。
初期鉄器時代のスキタイは平面の馬用装飾品を数多く遺しましたが、裏は真っ平らでいかにも流し込んだという感じがするのですが、本品は全てが緩やかな曲面で連続しており(おそらく手擦れではなく製造当初の形状)、金具部分にも手のような有機的な意匠を用いています。青銅器文化の中庸にして、高度な美的感覚を持ち合わせていたことを伺わせます。
バクトリアの印章自体は円形の幾何学紋やその中に動物紋が入っているものが一般的で、動物の形をしているものは比較的少なめです。本品はその中でも優れた作と言って差し支えないでしょう。
大英博物館