ヘルメース/メルクリウス(1-3世紀 ローマ)※ご売約済
素材: 青銅
サイズ: 高さ 6.4 cm
現代日本人が最も多く使う形容詞は「かわいい」である。
かわいいが溢れかえった世の中にあって、かわいいは擦り切れ、消費され、もはやかわいいは疲れている。
古代の地母神などの造形には現代にない愛嬌があってかわいいとも思うが、模倣でなく土の中から生まれたような未知の姿を見ると私にはむしろ凄みの方が伝わってくる。
ローマ人はギリシアの超写実的な美に憧れたが、それを実現できるものは少なかった。そこに遠く及ばない下手な作がご愛嬌に見えることがよくある一方で、ギリシア模倣のムーブメントから明らかに違う道に進んだものがある。そこには目指されたゆるさ、かわいさがあるような気がする。
カドゥケウス(杖)と財布を持ったメルクリウス(ヘルメース)。神々の伝令、旅、商などを司る多面的な性格を持つ。もともとの起源は豊穣多産の神であったため、しばしば男根と共に表現される。